INTRODUCTION はじめに

フリーハンドで幾何学模様を描く-アマゾン屋 - アマゾン・シピボ族の泥染め

シピボ族の伝統工芸「泥染め」

南米ペルー、アンデス山脈のふもとに広がるアマゾン地域に暮らす先住民族シピボ族は、木の皮からとれる染料と特別の泥を使って綿布を染め上げる伝統工芸「泥染め」を今に伝えています。
全てフリーハンドで描かれるアマゾン特有の幾何学模様のデザインは、シピボ族の精神世界を映し出していると言われ、これは、太古の森から発信される奥深いメッセージではないかと私は考えています。

近年では、シピボ族のシャーマン文化の伝統を受け継ぐ薬草アヤワスカを使った儀式や、精神病の治癒などが外国人から注目されています。スピリチュアルな世界を表現した色鮮やかな刺繍布が主流になっており、幾何学模様をプリントしたものや化学染料を用いたものも出回っています。現地でしか採取できない天然の材料だけで染める「シピボ族の泥染め」は、森林伐採のため染料も手に入りにくくなり、フリーハンドで模様を描く能力のある作り手も減少し、継続が困難な状況が進んでいます。今後、ますます希少価値が高まりそうです。

森と共存するための知恵と能力

アマゾンの森で原始的な生活の中に入ってみると、彼らの暮らしに学ぶことは多く、森と共存するための知恵と能力を備えもつ先住民族のたくましさを感じます。
最低限に必要なものだけがあるシンプルな生活。大自然の中で、本来人間がそうあるべき生き方をしていると思いました。
確かに、現代社会の中では彼らは貧しいといえますが、小さなことでクヨクヨしない大らかさと、どうにか生き延びていける人間的強さがあり、心の純粋さと、精神的な豊かさに溢れているのです。

大自然の中のシピボ族の人々-アマゾン屋 - アマゾン・シピボ族の泥染め
シピボ族の子供たちの笑顔-アマゾン屋 - アマゾン・シピボ族の泥染め

未来へ繋げたい…私たちにできること

文明化が進むにつれてシピボ族の暮らしはすっかり様変わりし、伝統工芸の技を引き継げる者が少なくなってきました。この貴重な人類の資産を未来に継承していくために、私たちに何ができるでしょうか? 生活に困っていた彼らの生活をどうにかして支えたい、この素晴らしい伝統工芸を絶やさずに作り続けてほしい、という気持ちだけで、彼らに代わって泥染めを広く伝え販売する作業を始めました。せめて彼らが安心して泥染めづくりを続けていけるようにと、いつも祈っています。